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「お、おう……」
 ハシリイみやげの『ペナント』を広げたタケヒロのそんな反応にミソラが満足している向こうで、トウヤは女にチリーンの所在を問うた。彼女が腰に掛かったポーチから紅白の球を取り出し、戻すのを確認してから、トウヤもしまっていたものを机上に差し出した。小指大のガラス瓶には、乳白色の液体が収められている。
 多分本物だ、と呟くトウヤの視線は、まだ先程の資料から外れきっていないようだ。普段通りに振舞おうとしているが、随分と弱ってみえる。うわのそら気味の言葉にレンジャーは眉根を寄せて、ガラス瓶を摘み上げた。
「これをハシリイで?」
「ああ。売人と接触できた」
 さらりと放たれた一言に、女は顔を上げ瞠目した。それから、部屋の隅で子供たちが微妙な土産物に気を取られているのをそれとなく確かめ、厳しい顔で男へと詰め寄る。
「いつも言ってるでしょ、危ない事しないで」
「悪かったよ。ハシリイの……世話になってる町のことだから気になったんだ。それに今年は」
 ハシリイにいた時よりはきっちり包帯を巻きつけてある左手を、右手で軽く擦る。レンジャーはその仕草から何か察した上で、だからって、と難色を示した。視線を下げる。土産とも呼べない容量の液体が、弄ばれて揺れている。
「……けど、『多分本物』、っていうのは? その売人が」子供たちの様子をまた一瞥して、レンジャーは特に声を潜めた。「リューエルを名乗った? 自分から?」
 ぼんやりと資料に吸われていた視線が、不意に話し相手を捉えた。トウヤは、ともすれば『何を言っているんだ』とでも言い出しそうな目をしていた。それをいくつか瞬かせ、少し記憶を辿る。自分が何を言ったのかも分からない、というくらいの覚束なさが見え隠れする。
「売人は雇われだったよ。そいつがリューエルの構成員を見分ける方法を知っていた。確かな情報だと思う」
「それは……」
 対して女の『探る』色味が、静かに鋭さを増していく。
「あなたがリューエルの内部にいたことがあるから、確かだと思えるってこと?」
 リューエルの内部に。その言葉と受けると共にまた視線が紙の上へ移ろった。男の右腰のボールの一つ目が、カタカタと警告の主張を示した。
「……そうだな」
「それって、どんな?」
 レンジャーは更に声量を絞り、本人も気づかないくらいに身を乗り出す。カタカタカタ。不規則な振動を伝えてくるボールに気付くと、トウヤはその上に右手を置き、包み込むように握った。
 瞼を閉じ、開く。窓辺から注ぐ淡い光を映しこむ。寂しそうな色をしていた。
 その前に聞きたい、と彼は言う。真っ直ぐ上がった双眸が、詮索をかける目の前の女を、はっきりと捉えた。
「君が僕に名前を教えないのは、僕のことを信用していないからだ」
「え?」
 突拍子もない言葉にレンジャーは目を丸めた。机の上に出されていた彼女の掌がきゅっと拳を作る、まっすぐ視線を戻したトウヤの口元は、どこかで怯えるように、歪んでいる。
「僕は君のことを、信用してもいいのか?」
 小さな声だった。苦笑が滲んでいる。自信なさげに微笑む彼を、彼女は茫然自失としてしばらく見つめていた。
 整然と時が刻まれる。彼女は答えを出せない。
「――なぁ」
 冷やかな空気を乱したのは、またしても、少年の一声であった。
 突然大人の会話に割り込んだタケヒロはやはりむすっとして彼らを、正しくはトウヤ一人を睨んでいる。子供らの前には広げられたペナントと、食べつくされたお菓子の包装紙が残骸となって転がっていた。
「いつまでいんだよ。キブツだかなんだか知んねぇけど出てくならさっさと出てけよ空気悪ぃんだよ」
 そんな身も蓋もなさにミソラはぎょっとしてタケヒロを見たが、トウヤは笑うだった。すいませんでした、とその気のなさそうな軽い調子で立ち上がる。何も発せずにいるレンジャーの横を通りながら、子供まで届かない低い声で二言三言謝罪を残すと、本当にさっさと家を出ていってしまった。
「悪い。今のは無しだ。君のことは信用してるよ」
 
 開いた戸が元の位置に収まると、乱雑と舞う埃が窓からの日差しに映っているのみだった。行ってしまったのか。ミソラは沈黙した扉を見つめながら膝を抱えた。キブツというのは、それほど遠い町ではないようだ。そうでなくたってテレポートできるテラもいるから、ミッションとやらを完了させればすぐに戻ってくることができる。けれど、それにしたってミソラには、何も声を掛けなかった。一緒に行こうも、待っていろも。
 隣が疎外感を抱えはじめたのを知ってか知らずか、本当に追い出してしまったタケヒロはやや気まずそうにぼりぼりと頭を掻いていた。大丈夫なのかよあいつ、と漏らす声には誰も反応を返さない。軽い溜め息と共に片手を額に添えたレンジャーは、子供を除け者にして一体どんな話をしていたのか。あの人は何を言って、彼女にあんな顔をさせたのだろう。……ちらとミソラを見るタケヒロも、一抹の不安のようなものを纏っている。それでも唇を尖らせた。
「あいつ、年下に気ィ遣わせてる自覚とかないんだろうな」
「そう。まさにそれ」
 顔を上げたレンジャーはきっぱりそう言いながらタケヒロを指さした。机に置いてあるマリルの包装紙を憂さ晴らしのようにびりびり破いて、中の紙箱をタケヒロとミソラのところへやった。中身は焼き菓子だ。小袋を開くと、芳しい香りが鼻腔をくすぐる。この袋の内側だけ、ハシリイの空気なのだ。
 口に入れると、見た目以上に甘かった。……その甘みの中に会話の一端が想起されて、ミソラはふと目を丸くした。
『お師匠様、甘いもの苦手でしたっけ』
『嫌いというか』
『苦手ですか』
『そんな感じかな。子供の頃は好きだった。僕の父さんが好きで……』
 ぼんやり蘇る声。あの話をするとき、とても優しい声だった。食むと、じんわりと滲みだしてくる濃厚な甘みの汁。モモンクレープを思い出す。
『こういう、ちょっとしたことを思い出すのが、前は、凄く辛かった。だから、思い出したくなくて、食べなくなって……気付いたら苦手になっていて……』
 途切れ途切れに話す彼に、あの時のミソラが、次に放った言葉は。
「……家族写真」
 呟くと、タケヒロとレンジャーの視線が一様にミソラを捉えた。口の中の物を落ち着いて飲み下してから、ミソラは顔を上げた。
「が、あるんです。お師匠様の部屋に。お父さんとお母さんと、子供の頃のお師匠様が写っているんですけど、お姉さんなんて写っていませんでした。だから私、てっきり一人っ子なのかと思っていたんです」
 そうだ。彼の昔を示す唯一、あの色褪せた写真の中に、お姉さんなんて人物はいない。
 特に気にも留めない様子で、へー、とタケヒロは声を漏らした。けれど女の方は、それ以上その話題には触れたくないと言うように、ミソラに背を向けてそこから立ち去ってしまった。





 タケヒロというのは、ミソラの唯一の友人で、良き遊び相手で、理解者だ。口は悪いけど裏表のない、最も話のできる人物。だからミソラは、ハシリイでミソラの身に起こったことを、タケヒロに話すと決めていた。
 色々を忘れたはずのミソラが初めて出会った女性に感じた、眩暈のするような『既視感』。それから連夜夢に見た黒髪の女。彼女が泣いていたこと。『許さない』と言ったこと、その響きが、しばらく脳裏にこびりついていたことも。タケヒロは真剣な顔で聞いてくれた。腕を組み、首を傾げて考えてくれた。
 レンジャーの家は既に離れ、今は二人がいつも落ち合っているドラム缶のある裏路地の一角だ。二匹のポッポたちが、推察する主人の様子を興味深そうに眺めている。
「髪が黒くて長い女なんて、ココウにもいくらでもいるのにな。ハギのおばちゃんとかもそうじゃん。あと古本屋のかわいい姉ちゃんとか」
「そうなんだよね。でも、そうじゃないっていうか」
 思い起こしてみると、髪が黒くて長いだけじゃなく、それを結い上げて一つに纏めているという点で、カナミと夢の中の人は共通していた。髪型なのだろうか。けれど、そういう髪の人だってココウにはちらほらいて、ミソラも見てきたことがある。
 ミソラの足元でひなたぼっこしている片耳のニドリーナが、くわぁと欠伸をする。ミソラは座り込んでその頭を撫でた。
「カナミさんが特別似てたのかな」
「そのカナミって人が夢の女と同一人物だってことは、本当にないのか?」
「ないと思う。出会ったときに初対面だってはっきり言われたし、夢の人は顔もいまいち思い出せないけど、なんとなく違う気がするんだ。それにカナミさんは多分、許さない、なんて言わない。そんなの似合わない」
 なんでも笑い飛ばして許してくれそうな、温かい日溜まりのような人だ。トウヤの『アレ』なのだというのは一応伏せて(話せばタケヒロがまともに取り合ってくれなくなる気がする)、ミソラはカナミのことを説明した。彼女と『夢の人』とは、性質がまるで違うのかもしれない。
 その人はどういう人で、ミソラにとってどういう存在だったのだろう。なぜ涙を流していたのだろう、何を『許さない』のだろう。それを考えると、いてもたってもいられないような焦燥に駆られてくる。
 まだまだ夏の色濃い日差しの中で、ミソラの暗みが差した横顔を見ながら、タケヒロは腰かけていたドラム缶から飛び降りた。ポッポ達の小さな頭がその動きを追いかける。
「じゃ、探してみるか?」
「探す?」
「髪の長い女の人。似てるだけでいいなら、ココウの中でも探せるだろ」
 記憶喪失になる前のことのヒントが見つかるかもしれないしな、と、タケヒロは鼻をこすった。
「お前がまだ会ったことない女の人なんかココウにだってうじゃうじゃいるぞ、俺の情報力で片っ端から会わせてやるよ」
 そう言って頼もしく胸を張る。同調するように、二匹のポッポがパタパタとはばたいて見せた。
 ミソラはそれを見て微笑み、素直にお礼を言った。
「ありがとう。でも、もういいんだ」
「いいって?」
「昔のことはもう、忘れたままでいいって。ハシリイで決めた」
 静かな声で言うミソラに、タケヒロは出端を挫かれたように何度も瞬きをした。ドラム缶に座り直して腕を組んだ。じゃあなんで話したんだよ、と言われても、それはタケヒロに知ってもらいたかったからに他ならない。けれど彼はそうは言わなかった。
「そんなもんか。……他人事だから分かんねぇけど、記憶って、大事だと思うけどな。俺は」
 タケヒロの真摯な声に、ちくりと棘が刺さるような、微かな痛みを覚える。
 ミソラが記憶喪失であること、それを思い出そうともしていないことに関して、タケヒロの口から今まであまり聞いたことがなかった。知らぬ間にタブーになっていたのかもしれないし、ミソラ自身でさえ記憶喪失であることを忘れて過ごしていたからかもしれない。それはタケヒロだけでなくて、トウヤだってそうだ。何か思い出したか、という言葉は、もう久しく聞いていない。おばさんからも、レンジャーからもだ。
 思い出す努力などというのは、そのやり方なんて今まではてんで分からなかったし、何か努めて行動したところでそれが実るとも限らない。どうして思い出さないんだと責めることには、何の意味もない。思い出せないことはミソラの責任では在り得ない。仮に思い出したとして、その結果縁のない土地で平和に暮らす今の状況が変化するとすれば、果たしてその『変化』がミソラにとって好ましい事であるのかどうか、それも誰にも分からない。――ミソラに関わるミソラ以外の誰しもが、そんなことを、きっと一度は考えたのだろう。だから誰も、何も言わなかった。『忘れていることを忘れてしまっている』ミソラが、今のタケヒロのような言葉を受ければきっと胸を痛めると、皆気付いていた。
 記憶って、大事だと思うけどな。他人事だから分かんねぇけど、あくまでも俺は。そんなオブラートに包まれた言葉にさえ遠巻きに責められている気がして、ミソラは上手く笑えなかった。ずっと、皆に守られていたのだろう。痛い部分に触れないようにされて。そうして温かい壁の内で生きたミソラは、『忘れてしまっていた』記憶のことから、ついに目を背けることを選んだ。あの水陣祭の噴水の前で、昔のことはもういい、と宣言したミソラを、トウヤは責めなかった。彼と出会う前の状態に戻る術を放棄して厄介をかけ続けることを、拒絶せずに笑ってくれた。ミソラにはそれが嬉しかった。
「……やっぱり大事なのかな」
 ぼそっと落とした声が暗い。ハシリイに行くまでは、ミソラにとって、『過去の自分』などというものは完全に赤の他人だったのだ。けれど、たった鱗片が頭に過ぎってしまっただけで、『過去の自分』という人が中に息づいていることをミソラは意識する。その上、それを意識すると、途端にミソラは息苦しくなる。
 この返答は、完全に言い訳になる。毒のないリナの角を優しく撫でながら、ミソラは続きを言った。
「でも、その『夢の人』のことを考えると、凄く辛いんだ。胸が苦しいと言うか、喉がつっかえる感じがして、なんだか切なくなって……だから、出来るなら、考えたくない。もう一度忘れてしまえたら」
 どんなにかいいだろう。言いながらミソラは考えた。こんな底なし沼の感情は、ハシリイで一度切り捨てられた。鈍い太刀で、ばっさりと消し去ってしまえたはずだったのに。今更こんな気持ちに苛まれるのは、何故だ? ――ミソラの全く知らない人を追いかけて、トウヤが黙って出ていったからだ。それ以外にない。
 一方、返事を聞いたタケヒロは、ミソラが自問自答をしている間にみるみる目を丸くした。
 組んでいた指がせかせかと動く。地につかない足がふわふわ揺れた。ポッポ達が小刻みに頭を動かしてそれを見ている。
「それって、胸がきゅんってなる感じ?」
「え? あー、うん。そうかも」
「その人のことを考えると、そわそわして、じっとしてられなくなるみたいな」
「あー」
 曖昧に肯定するミソラに、タケヒロはごくりと唾を飲んだ。それからまたドラム缶から飛び降りて、突然、ミソラの両肩をぐいっと掴んだ。
「え、何?」
「お前それ」
 早口に声を飛ばす。それからもう一度、喉を鳴らした。ごくり。たっぷり勿体ぶってから、タケヒロはそれとなく年長者の余裕を含んだ声色で、ミソラに告げた。
「恋だよ」
 恋。
 タケヒロは良い声で繰り返した。ミソラは薄く口を開けて黙っていた。ポッポ達が固まって主人を見ている。リナは寝息を立てはじめた。タケヒロのくりくりした目が、日射を浴びて、きらきらと眩い。
 ……ミソラは何度も瞬きを繰り返して、とても真面目な顔で自分を見つめ続ける友人を、そっくり見つめ続けた。
「恋?」
「恋」
「恋……」
「恋だよ」
「恋か……なんかそう言われると……?」
「いや決まってる絶対恋だ。間違いない。だって俺レンジャーの姉ちゃんのこと考える時そんな感じだもん」
「そ、そっか」
「あっ!」
 タケヒロは口を塞いでぷるぷる素早く首を振り、リテイクをばかりにもう一度ミソラの肩を掴んで揺すった。
「つまりお前その人のこと好きだったんだよ!」
 あーそういうことだったのか俺ずっと変だと思ってたんだよお前一応男の癖に姉ちゃんの太ももとか見てもなんとも思ってねぇみたいじゃん、でも他に超好きな人いたなら納得だわーなるほどなーと自己解決しているタケヒロに揺すられながら、大破して深海に沈みゆこうとしていた難破船ミソラ号は、みるみるうちに浮力を取り戻していくように思えた。好きだった人。僕が恋をしていた。長くて黒いつややかな髪の、首筋のすらっとした、あのきれいな女の人に。だとすれば僕は……そこまで気付いて、はっと思考を止めた。ダメだと首を振るミソラに「何がだよ」と返すタケヒロは、今にもミソラに喰らいつきそうな勢いだ。
「だって、その人の事が好きだったとして、僕はその人に会えない。会えない人のこと考えてるより、今の生活が大事だ。もし会えたとしたって僕、その人のことがどれだけ好きだったとしても、タケヒロやお師匠様やおばさんのこと、それ以上に好きで大事だって思えるよ」
 そう大胆な告白を受けると、恋に浮かれるタケヒロもさすがに、面食らって黙らざるを得なかった。
 痛い位揺すりまくってきた手が、そろそろとミソラから剥がれる。ここぞとばかりにミソラは友人を見つめ続けた。吸い込むような蒼穹の瞳にそうやって見つめられて、タケヒロはちょっと頬を赤らめながら目を逸らした。ぼりぼりぼりと頭を掻く。
「……そっか」
「うん」
「そっかぁ……」
 変な沈黙の中に、規則正しいリナの寝息だけが淡々と流れていく。こそこそ笑っているポッポ達をちょっと恨めしい顔で眺めながら、タケヒロは頭を掻き続けた。貰った言葉を何度も何度も噛みしめて深く味わうように反芻する。それから、気恥ずかしそうに言った。
「じゃあ、髪切るか」
 ミソラが固まる。さすがに意味が分からない。
「え、何で?」
「だってお前、今失恋しただろ?」
「え?」
「失恋したときは、髪切るんだぞ」
 何を言っているんだ、この友人は。ミソラは一旦呆れ顔で彼を見やったけれど、男らしくも見えるしななんてと言われると、ちょっと心が揺らいだ。そういえばハシリイでもはぁちゃんに言われたっけ。どうしてミソラ兄ちゃんは髪が長いの、って。男の子なのに女の子みたいに髪が長いよ、変なの。ミソラはそれを聞いたとき、どう思ったんだっけ。蘇ってきた思考をそのままタケヒロに投げて寄越した。
「でも、この髪は、昔のことを何も思い出せない僕にとって、これだけ髪が伸びるくらい長く生きてた証っていうか……僕にもちゃんと昔があったんだって、証明してくれるもので……」
「でも昔のことはもういいんだろ?」
 タケヒロが首を傾げながら問う。何を言っているんだ、という顔は、互いが互いに向けたものだったのだ。ミソラはもう一度自問した。僕の言ったことは、確かに変かもしれない。というか、変だ。昔のことを忘れてしまうと決めたなら、昔という時間の存在を示す髪の長さに執着する意味など、どこにもない。
「……そうだよね」
 呟くと、よっしじゃあ切るか、とタケヒロも楽しそうに確認する。
 青天の霹靂。そんな気分だった。ミソラは促されるままに頷いてしまった。
 ミソラの見た目を女の子たらしめているこの髪の毛に付き合う必要など、ミソラにはもう、なかったのだ。







 
 
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